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他科医に聞きたいちょっとしたこと

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溶連菌感染症の抗生物質投与期間(2007年8月1日発行)

質問

溶連菌感染症の場合、ペニシリン、マクロライドを10~14日投与とありますが、最近のセフェムの場合も同じ期間でよいのでしょうか。CDTR-PI(メイアクト)、CFPN-PI(フロモックス)だと5~7日で十分、AZM(ジスロマック)だと3日間投与でよいとの意見も聞きます。また投与終了後、検尿(尿沈査蛋白定量)は必要でしょうか。必要だとすれば、時期をお教えください。
(大阪府・長澤 新、内科)

回答

国立病院機構東京医療センター 統轄診療部長(小児科) 岩田 敏

   A群溶血性レンサ球菌感染症においては、続発症としてのリウマチ熱や急性糸球体腎炎の発症を防ぐために、抗菌薬による適切な治療と除菌が必要です。ペニシリンに対する耐性菌が存在しないA群溶血性レンサ球菌の感染症に対しては、ペニシリン系薬の10日間経口投与が第一選択とされています。ペニシリンに対してアレルギーのある患者さんに対しては、マクロライド系薬を投与しますが、マクロライド系薬については耐性菌の存在に注意する必要があります。新世代経口セフェム系薬の5日間投与も、ペニシリン系薬の10日間投与と同等の治療効果、除菌効果のあることが最近報告されており、推奨されていますが、この方法がリウマチ熱などの続発症の発症予防に有効であるか否かに関する明確なエビデンスは示されてはおりません。

   ペニシリン系薬などによる通常の治療で除菌できない場合や、再排菌例に対しては、β‐ラクタマーゼ産生菌の共存によるペニシリン系薬の不活化の可能性を考慮し、β‐ラクタマーゼに対して安定な、β‐ラクタマーゼ阻害薬とペニシリンを組み合わせたクラブラン酸/アモキシシリンなどの薬剤や、新世代経口セフェム系薬を選択します。また細胞内寄生性のA群溶血性レンサ球菌に対しては、細胞内への移行に優れたマクロライド系薬が有効である可能性があります。

   無症候性保菌者への対応に関しては議論のあるところですが、リウマチ熱や急性糸球体腎炎の多発が見られる場合、A群溶血性レンサ球菌感染症の地域での流行や家族内での反復感染がある場合、扁桃摘出が検討されているような場合には、除菌することが推奨されています。

   日本小児呼吸器疾患学会と日本小児感染症学会により作成された「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2007」に示されているA群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の抗菌薬療法を、参考として表に示しました。

   抗菌薬投与後の除菌の確認、検尿に関しては、実施している施設と実施していない施設があると思いますが、私共の施設では、治療終了後数日から1週間前後のタイミングで、咽頭培養もしくは迅速診断による除菌の確認と検尿による蛋白尿、血尿の有無の確認を行うようにしています。

A群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の抗菌薬療法

1. 推奨される抗菌薬療法
バイシリンG 5万単位/㎏/日、分3~4、10日間
アモキシシリン 30‐50㎎/㎏/日、分2~3、10日間
セフカペン・ピボキシル 9㎎/㎏/日、分3、5日間
セフテラム・ピボキシル 9㎎/㎏/日、分3、5日間

・基本的には、ペニシリン系抗菌薬が第1選択である。
・セフェム系薬による治療は、除菌効果に優れるとの報告があるが、異論もある。


2. ペニシリンアレルギーがある場合の処方例
エリスロマイシン 40㎎/㎏/日、分2~4、10日間
クラリスロマイシン 10‐15㎎/㎏/日、分2~3、10日間
アジスロマイシン 10㎎/㎏/日、分1、3日間(除菌率は劣るとの報告がある)

・わが国においては、マクロライド耐性菌の分離頻度が高く、注意を要する。


3. 再排菌例への処方例
アモキシシリン・クラブラン酸カリウム 30~60㎎/㎏/日、分3、10日間
セフカペン・ピボキシル 9㎎/㎏/日、分3、10日間
セフテラム・ピボキシル 9㎎/㎏/日、分3、10日間


4. 無症状保菌者への処方例
アモキシシリン・クラブラン酸カリウム 30~60㎎/㎏/日、分3、10日間
クリンダマイシン 20㎎/㎏/日、分3、10日間

・無症状保菌者に対する対処方法には議論が多い。
※アモキシシリン・クラブラン酸カリウムは連鎖球菌に保険適応しない。
(日本小児呼吸器疾患学会/日本小児感染症学会作成「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2007」より引用)

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