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消化器領域の治療指針とパス

掲載記事は発行時(2005年)の内容です。

I  治療指針とパス

肝細胞癌の保存的治療 TAE、TACE

金沢大学 消化器内科 教授 金子周一
金沢大学 名誉教授 松井 修

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   肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)は肝動脈の担癌区域を選択し、カテーテルを挿入して、そこから塞栓物質や抗癌剤などを注入することにより、栄養動脈を塞栓し腫瘍を阻血壊死に陥らせる方法である。進行した肝細胞癌は門脈血流が欠除し、肝動脈のみに栄養されているが、TAE・TACEはこの肝組織および肝細胞癌の血流の特殊性を利用した治療法である。TAE・TACEはほかの治療法(局所治療、外科治療など)と併用されることも多く、肝癌の治療のなかではもっとも汎用性の高い治療法である。

適応および禁忌

   一般的に切除不能の進行肝細胞癌でかつ経皮的局所療法の対象外症例が適応となる。またTACEは、肝癌が単発でも多発でも占拠部位によらず肝内すべての腫瘍を治療対象とできることから、多発肝癌の治療に適している。重篤な合併症も少なく、繰り返して治療が可能なことから、肝癌の治療のなかでは広く頻用されている。
   具体的な適応および禁忌は施設により異なるが、おおよその基準は(表1)のとおりである。

表1:TACEの適応と禁忌

適応
  • 腫瘍径3cm以上2~3個、3cm以下3個以上の肝細胞癌
  • 手術、経皮的局所療法の適応のない肝細胞癌
  • 肝癌により門脈本幹の閉塞がない
  • 黄疸はT-Bil最大5mg/dL以下まで、通常は3mg/dL以下が望ましい(亜区域塞栓は可)
  • 著明な腫瘍内シャントがみられない
絶対禁忌
  • 門脈本幹の腫瘍栓による閉塞を有する
  • 肝硬変で非代償性肝硬変(亜区域塞栓はChild Cでも可能)
  • 他に生命予後を規定する疾患を有する
相対禁忌
  • 高度の動静脈シャントまたは動門脈シャントを有する
  • CTにて腫瘍濃染が認められない
  • 遠隔転移を有する

※金子周一,松井 修:Clinical Path Report 別冊−消化器におけるクリニカルパス,p.36-39,医薬情報センター,2005一部改変

治療の目的

   大きな肝細胞癌や局所治療および外科的切除後の多発再発にも有用な治療法である。また、ほかの治療法の特徴を考慮した集学的治療にも有効である。このことから、より良い治療成績と患者のQOL向上を目指すべく、個々の症例ごとに適切な治療法を検討していく必要がある。
   現在塞栓療法は、血流支配にのっとった抗癌剤(油性造影剤と抗癌剤の混合液)による化学療法と、塞栓物質(多孔性ゼラチン粒)による阻血効果を併用したTACEが施行されている。なお、2014年より海外で一般的に用いられるマイクロスフィアなども使用できるようになっている。使用する塞栓物質量ならびに抗癌剤は腫瘍径や腫瘍濃染像の程度、腫瘍の占居部位、カテーテル先進部などにより決める。

※ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル

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